かつての大阪商人は、 帳簿を見る目が肥えていた!?
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かつての大阪商人は、 帳簿を見る目が肥えていた!?

帳簿をつける大切さについて歴史から学べる教訓とは?
歴史学者の礒田道史氏とTKC全国会の坂本会長が語り合いました。

 

坂本 われわれTKC全国会は、中小企業の皆さまの会計や経営のパートナーとして活動していますが、「帳簿作成は税理士に丸投げしてしまえばいい」という考え方の経営者も少なからず存在していて困惑しています。

こうした経営者は、目隠ししながら経営をしているという悪循環に陥っていると私自身は思うのですが。

磯田 帳簿をつけることで自社の経営、会社の様子を知るというのが、いちばん勉強になるはずなのですが、実際には会計帳簿をつけるのが大好きという人はあまりいませんよね。

私も「武士の家計簿」の研究を始めた時、帳簿を調べるのはたいへんだろうなと思ったのですが、やってみると意外と面白い。

ないものが見えたり、発見がたくさんあったり。

帳簿つけを敬遠しがちな経営者の方もこうした面白さに気づくといいですね。

 坂本 まったく同感です。

きちんと帳簿をつければ、現在の課題や経営ヒントが見えてくるということを、経営者には理解してほしいと願っています。 

磯田 帳簿といえば、かつての大阪商人は「三つのこと」を大切にしていたと言います。

ひとつ目は「始末」です。始末とは、現代風に言えばコスト管理です。

ふたつ目は「才覚」。才覚とは、アイデアや工夫ですね。

最後のひとつが「算用」で、これはそろばんがわかって帳簿がつけられること。この「算用」については、単にそろばんができる、帳簿がつけられるというだけでなく、「帳簿が読める」ということも含むのではないかと私は考えています。

帳簿を見た時、どこに問題があるか、どこに利益があるか、どこに未来があるかなどを察知できる能力ですね。つまり「才覚」と「算用」は、切り離せないものなのではないでしょうか。

「始末」に関しても、複式帳簿であれば減価償却がありますから、ある程度価値が減っていく中で、時間軸に従ってどういった資金調達が必要になってくるかも見える。このあたりが会計の奥深いところなのですがね。

坂本 大阪商人のつながりでいえば、井原西鶴は著作物「西鶴織留」の中でこんなことを書いています。

「万(よろづ)の事について帳面そこそこにして算用こまかにせぬ人。身を過るといふ事ひとりもなし」。

つまり、帳簿をいいかげんにしている人でまともに商売した人はいない。そう言い切っているんですね。

 磯田 私も、いろいろな商人や大きな農家、旧家の帳簿をたくさん見てきましたが、長く堅実に続いているところは帳簿もしっかりしています。

日本をG7加盟国になるような経済大国にしたのは、江戸時代の帳簿への執念というか、そういう発想ができる脳になっていたというのが大きいのかもしれませんね。

◎本内容は、2021年8月に配信された読売新聞セミナーでの対談内容を再構成したものです。

次回のテーマは、資本主義の父と言われた「渋沢栄一が説いた<信用>とは」。どうぞお楽しみに


TKC「会計で会社を強くする」

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