「スポーツジムを自主休業。その後・・・」財務情報の開示に積極的な姿勢が評価されプロパー融資を獲得
静岡県でスポーツジムを経営するA社長は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、県から休業要請が出る前に自主休業を決意したという。資金繰りに不安を募らせるA社に地元金融機関が救いの手を差し伸べたのは、財務情報の開示に積極的な姿勢が評価されたからだった。
〈社長の声〉
今年2月末、テレビのニュース番組で、静岡県内で初となるコロナ感染者が確認されたという報道が流れました。しかもスポーツクラブに通っていた方のようです。中国で猛威を振るっている新型コロナウイルスによる危機が、とうとうここまで来たか、と覚悟を固めた瞬間でもありました。
金融機関に財務情報を開示していて良かった
当社は、静岡県でスポーツジムを経営。千葉県に続いて静岡県でもスポーツクラブでの感染者が確認されたことを受けて、県からの休業要請が出る前に自主休業を決意しました。休業に伴い、休会者に対する会費の返却義務が生じます。また、地代家賃や社員の人件費など、固定費の負担は相当な額にのぼります。収束時期が見えないこともあり、手持ちの資金でどこまで踏ん張れるのか、不安が募るばかりでした。
そこで3月初旬に、当面の資金繰りや融資に関して顧問税理士の木村治司先生に相談しました。
当社では昨年5月に新店舗をオープン。順調に売り上げを伸ばしている中でのコロナ禍でした。しかし、その好調な売り上げが裏目に出て、当社は「セーフティネット保証」の対象条件から外れてしまうということでした。
しかし、このままでは資金が底をつく。木村先生からは「日頃から月次決算を実践しているし、毎期、TKCモニタリング情報サービス(MIS/※1)で決算書の開示も行っています。メインバンクの信用金庫はその姿勢を高く評価しているので、融資を申請してみましょう」との提案があったので、このアドバイスにもとづき融資申請をすることにしました。
その結果、信用金庫から「日頃から積極的に決算書データを開示してもらっているので、貴社の状況についてはよく理解できています」といって、3月末にプロパー融資(10年返済)を実行してもらえました。また5月には、いわゆる「コロナ融資」を追加で実行してもらうことができました。
月次の帳簿をつける理由
「もう駄目かもしれない」との思いが何度も頭をよぎりましたが、今でもなんとか事業を継続できています。木村先生が口酸っぱく、「月次の帳簿は税務署のためにつけるのではないですよ。会計で会社を強くするためにあるのです。融資が必要なくとも金融機関には毎期決算書を開示しましょう」と話していた言葉の意味が、今になってようやく分かったような気がします。
※1)TKCモニタリング情報サービス(MIS):企業の同意のもと会計事務所が金融機関に決算書等を電子データで提供する無料のサービス。詳細はこちらから。
〈会計事務所のコメント〉
昨年の5月から新店舗を出しており、その好調な売り上げが影響してセーフティネット保証の基準を上回っていました。相談の時期もまだ3月初旬であったため、コロナ対策用の融資も明確でない状況でした。しかし現時点では基準を満たしていないものの、緊急的な状態である旨を、メインバンクの信用金庫と政府系金融機関に相談することを社長に提案しました。その結果、3月末に信用金庫からプロパー10年返済で当座の資金を実行してもらい、5月にあらためてコロナ融資を追加で実行してもらいました。
当関与先企業の社長さんは日頃から会計システムを活用し、月次で業績管理されています。そのような経営者としての姿勢が、緊急時においても金融機関から評価してもらえたと思います。
顧問税理士:木村治司税理士事務所 税理士 木村治司(静岡県)