勘定科目内訳明細書の様式が改訂されます!改めて電子申告の留意点を点検しましょう
こんにちは、Nakayama@TKCです。本日は税理士の宮﨑純子先生による勘定科目内訳明細書に関するコラムをお届けします。ぜひ、ご一読ください。
1.<最新トピック>勘定科目内訳明細書の様式が改訂(令和6年3月1日以後終了事業年度から適用)
令和6年3月1日以後終了事業年度から勘定科目内訳明細書の様式が変わります。改正内容としては、国税庁が定める16様式のうち10様式において、取引先の事業者登録番号を記載する欄(登録番号欄)が追加され、「売掛金(未収入金)の内訳書」等に登録番号(法人番号)を記載することとされました。
e-Taxでの電子申告用の新しい勘定科目内訳明細書の標準フォーム(Excel)は公開されていませんが(2023年9月11日現在)、適用時期が令和6年3月1日以後終了事業年度からとなりますので、多くの企業様が今期から新様式での電子申告が必要になります。
「登録番号(法人番号)」欄に登録番号又は法人番号を記載した場合には、例えば売掛金(未収入金)の内訳書であれば「名称(氏名)」欄及び「所在地(住所)」欄の記載を省略しても差し支えないとのことです。
またTKCより国税庁及び国税局に確認したところ、「相手先」欄を記載していれば、「登録番号(法人番号)」欄を記載しなくとも差し支えないとのことでした。
「登録番号(法人番号)」欄を追加したのは納税者の負担軽減を図るためとのことです。
なお、先日(2023年9月初旬)TKCが開催したセミナーにおいて、勘定科目内訳明細書の様式改訂の認知度アンケート(※)を取ったところ、本改訂を知っている方はセミナー参加者の1/3以下にとどまり、今後の業務に不安を残す結果となりました。
※ アンケート対象法人はすべて大法人となります。
今後、e-TaxのHPに勘定科目内訳明細書の新様式の標準フォームが掲載されることが見込まれます。ここからは改めて勘定科目内訳明細書の電子申告対応の留意点として、e-Taxで気をつけていただきたいエラーについてご説明したいと思います。
2. 勘定科目内訳明細書電子申告対応の際の留意点について
2.1 勘定科目内訳明細書の電子申告の際は所定のフォーマットでの作成が必要です。
電子申告義務化対象の大企業においては、既にご存じの方も多いとは思いますが、法人税申告書の添付書類(財務諸表・勘定科目内訳明細書)を電子申告する際には、国税庁標準フォームでのデータ作成が必要となり、PDFファイルでの対応は認められません。
国税庁の勘定科目内訳明細書の標準フォームは国税庁 e-Taxのサイトよりダウンロードできます。
国税庁の標準フォームで作成した勘定科目内訳明細書のCSVファイルはe-Taxの「CSVファイルチェックコーナー」にてエラーチェックを実施します。
e-Taxで電子申告する場合の作成要件を満たしているかチェックできます。
2.2 勘定科目内訳明細書電子申告対応の際の良くあるエラー
国税庁標準フォームの勘定科目内訳明細書を作成し、電子申告する際は、一定の要件を満たさないとエラーとなり電子申告ができません。
よくあるエラー内容は以下の6つです。
上記のエラーについて少し説明します。
2.2.1 カンマ
項目にカンマがあるとエラーになります。国税庁標準フォームでの数値入力の際はカンマを入れても反映されない書式になっていますが、例えば別のファイルからカンマ付きの数値をコピー&ペーストをした場合には数値とともに書式もコピーされてしまい、カンマもそのまま入力されてしまいます。そのため、コピー&ペーストで数値入力する際には注意が必要です。
2.2.2 外字
e-Taxの利用可能文字一覧で使用可能文字かどうかを確認します。
例えば中国の深圳市の「圳」は使用不可です。外字等を含むExcelファイルをCSVデータに変換すると外字等は「?」に変換されてしまいます。
「?」自体はe-Taxで利用可能な文字のため、ファイルチェックコーナーにてエラー表示にはなりませんが、CSVデータの変換時に「?」に変わってしまいます。「?」のまま送られてしまうのを避けたい場合は、修正が必要となります。
2.2.3 半角カナ, 文字制限超過, 小数点桁数超過
半角カナ(例:ハンカクカナ)はエラーとなります。
2.2.4 文字制限超過
既定の文字数を超過するとエラーになります。
2.2.5 小数点桁数超過
既定の小数点桁数を超えるとエラーになります。
2.2.6 必要なデータ列数の相違
こちらは以下「2.3 データ列数に係るエラーの注意点」にて説明します。
2.3 データ列数に係るエラーの注意点
2.3.1 必要なデータ列数について
国税庁の勘定科目内訳明細書の標準フォームは16様式あり、各様式でそれぞれ必要なデータの列数(データが存在すべき列数)が異なります。
例えば上記は預貯金の勘定科目内訳明細書ですが、必要なデータの列数は8列です。
CSVデータに、テキスト文字がない空欄でも 「空データ」が存在していると列データが存在していることになります。ExcelでCSVデータを開いた場合、見た目ではわかりませんが、CSVデータをテキストファイルで開いてみると列分だけカンマで区切られたデータが存在します。
空データを含め必要なデータの列数が不足すると勘定科目内訳明細書の電子申告における作成要件を満たさないため、エラーになります。
2.3.2 データの列数はメモ帳で確認できます。
では、必要なデータの列数の不足が起きるのはどのようなケースかを見ていきたいと思います。
国税庁の勘定科目内訳明細書の標準フォームで作成した勘定科目内訳明細書をCSVデータに変換します。以下はCSVデータをExcelで開いた場合(左)とメモ帳で開いた場合(右)です。
CSVデータとは各項目を「,」カンマで区切った文字データです。文字データがない列は「,,」の表示になります。
7列目の数値(1行目だと「1230714」)の後ろにカンマ「,」があり、そのあとは文字や数値情報など何もありませんが、これは文字データは存在しなくとも空データが存在しており、それによりデータは8列あると認識されます。
預貯金の勘定科目内訳明細書の必要なデータの列数は8列です。空データを含めてちゃんとデータが8列あれば電子申告の際に必要とされるデータの列数の要件を満たします。
2.3.3 必要なデータの列数の相違はどのように発生するか
作成したCSVデータにエラーが発見された場合、エラーを修正しなければなりません。その際、当該CSVファイルのアイコンをダブルクリックして開いてしまう方も多くいらっしゃると思いますが、ここに落とし穴があります。
Microsoft Officeを利用している場合、CSVデータを展開するアプリケーションはデフォルトでExcelになっていると思います。この場合CSVファイルをダブルクリックするとExcelでCSVデータを展開することになります。
注意が必要なのは、ExcelでCSVデータを開く場合に、Excelの設定の影響を受け自動的にデータが置き換わってしまい、意図しない形で保存されてしまう点です。
※ 例えば「001」が、Excelで開くと「1」となり、頭の「0」が勝手に消えてしまう「0落ち」が生じる等です。
勘定科目内訳明細書作成時の例でいえば、以下の預貯金の勘定科目内訳明細書の場合、最終列の8列目「摘要」の項目には文字や数値など何もテキストデータがありません。
この場合タイトルの1、2行目を削除してCSVデータに変換して一度保存した後にExcelでCSVデータを開くと、開く前に8列目に存在していた空データが削除されてしまいます。
ExcelでCSVデータを展開した場合に8列目の空データが存在しているか、存在していないかは見た目では判断がつきません。
メモ帳でCSVデータを展開すると違いがわかります。
以下では(左)保存した後にExcelで開いていない状態のCSVデータ(8列目に空データが存在する場合)と、(右)保存した後にExcelで一度開いた後のCSVデータ(8列目に空データがしない場合)を見てみます。
メモ帳で開くと違いが分かりますが、保存後にExcelで開いてしまったCSVデータは7列目の数値(1行目だと「1230714」)の後に存在していた「,」が消えています。Excelの設定による影響を受け、空データが削除されてしまいました。空データが削除されることで、必要なデータの列数を満たさなくなるため、エラーとなります。
CSVファイルチェックコーナーでの表示は以下となります。
「読み込んだCSVファイルの1行のカラム数が正しくありません。」と表示されます。少しわかりにくい表現かもしれませんが「カラム」とは列のことで、要するに列のデータ数が正しくないということです。
こうなってしまった場合はメモ帳でカラム数が一致するようにカンマを追加するか、標準フォームの作成からやり直す必要があります。
2.3.4 CSVデータ取り扱いの鉄則!!
CSVデータをExcelで開いてしまうとExcelの独自処理により修正されてしまうことがあるため、CSVデータを修正する場合はメモ帳等で開くのが鉄則です。
CSVデータを開く際は以下の手順で対応しましょう。
思いがけず起きてしまう「必要なデータ列数の相違」で苦労されることがないよう「CSVデータはメモ帳などで開く」の習慣をつけていただくことをお勧めします。
以上、今回は勘定科目内訳明細書の様式改訂と勘定科目内訳明細書の電子申告対応の際の留意点について、解説させていただきました。3月決算法人の企業においては進行年度の確定申告から対応が必要となりますので、対応準備はぜひお早めに。
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