経済大国への道を示した 福沢諭吉のもうひとつの 「すゝめ」とは。
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経済大国への道を示した 福沢諭吉のもうひとつの 「すゝめ」とは。

武士の学問の常識をひっくり返した福沢諭吉について、歴史学者の礒田道史氏とTKC全国会の坂本会長が語り合いました。


磯田 渋沢栄一とともに、明治期の日本に大きな影響を与えたのは、「福沢諭吉」といっていいでしょうね。

坂本会長は、福沢諭吉についてどのような評価をされていますか?    

坂本 慶応大学の創始者であり、<学問のすゝめ>を出版したことで有名な福沢諭吉ですね。

あの誰もが知っている一文「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」から始まる<学問のすゝめ>は当時、大ベストセラーになったと聞きます。 

そして、これはあまり知られていないのですが、私が注目したのは<学問のすゝめ>とペアになる<帳合之法>というタイトルの本です。

<帳合之法>とは、つまり帳簿を合わす法ですね。今で言えば複式簿記の教科書でアメリカの簿記書を翻訳して出版された、日本で最初の複式簿記の本です。

<帳合之法>で福沢諭吉はこう言っています。「武士の学問には和学などいろいろとあるけれど、それは実学ではない。これからは実学もちゃんとやれ」と。

実学の最たるものは複式簿記だということで、<帳合之法>は「実学のすゝめ」でもあったわけです。

磯田 面白いお話ですね。私は<武士の家計簿>という本を書いたのですが、江戸時代の上級武士にとって帳簿をつけるというのは恥ずかしいことだったのです。

利益を勘定するような真似は人徳のある者がすることじゃない。

武士がやるものじゃないという概念に縛られていたんですね。

それを福沢諭吉はひっくり返した。

それまでは難しい文字を読んだり、和歌や詩を詠んだりすることが学問と思われていたのに、福沢諭吉は「人間普通日用に近き実学」ということを言って、手紙の書き方だとか帳簿のつけ方だとか、そろばんや計量といったものが、実は人間として大事な“学び”なんだと説いた。

言われてみれば、確かにそうですよね。和歌を詠み、刀を振り回していたところで豊かな社会なんか来ませんから。

それをちゃんと一般にわかりやすい言葉と表現を使いながら説いたということが、福沢諭吉ならではの仕事だったように思います。

坂本 明治という激動の時代に、福沢諭吉は日本の経済力はこうして強くするんだよと道を示した。

その道を歩むことを可能にしたのは、「武士の家計簿」にあるような帳簿をつける実務能力だった。

この両者が噛み合って日本は経済大国へと発展したのかもしれませんね。

磯田 私もまったく同感です。

坂本 最後にひとつ、<帳合之法>の書き出しの一文をご紹介させてください。

「古来日本国中に於いて学者は必ず貧乏なり。金持ちは必ず無学なり」とあるんです。

言わんとしているのは、学者も金持ちも偏っている。

商売人にも学問が必要、ということなのですが、媚びることを知らない福沢諭吉らしい物言いが面白いと思いませんか。
               
◎本内容は、2021年8月に配信された読売新聞セミナーでの対談内容を再構成したものです。

次回のテーマは、フランスの史実「ルイ14世<恐怖の倒産防止法>」。どうぞお楽しみに


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